その直後、千尋から思っても見ない提案がされた。
「しょうがないから
勉強を見てあげるわ」
隼人は思わず千尋の顔を見上げた。
「千尋…冗談だよな?」
隼人は困惑しながら聞き返した。
「隼人が迷惑って言うなら、今の話は無かった事にして。但し、今後も直前で泣きついてきても助けないから」
そう言って千尋は自分の席に戻ろうとした。
「ち、ちょっと待って」
隼人は千尋を呼び止めた。
「どういう風の吹き回しだ。非常にありがたい話なのだが、あまりにも唐突だから驚いているんだ」
それを聞くと千尋は理由を話し始めた。
「確かに隼人の言うとおり唐突だったわ。それなら筋道を立てて説明するわ、理由は3つあるの」
「1つ目に学校の宿題なんかでピンチになる度に、幼なじみだからって助けを求められてばかりで大変。2つ目に隼人の成績は決して悪すぎるわけじゃないけどクラスの平均を押し下げているのは事実。そんなのが幼なじみなんて私の
プライドが許さない。3つ目に…ってこれは私の事情でもあるんだけど、最近
携帯を使いすぎちゃっているみたいで、
おこづかいが足らなくなってきっちゃった。
バイトすればいいんだろうけど、上の学校に進むことを考えたらバイトに本腰を入れるわけにはいかないの。だから…」
「だから?」
隼人は思わず聞き返した。
「えっと、次の考査試験が迫っているからそれまでの期間、私を隼人の
家庭教師としてバイトさせて」
隼人としては願っても無い話だ。ただ、隼人自身にもおこづかいに限りはある。
「俺だって、
一人暮らししているとはいっても金には限りがあるぞ」
隼人の親父は商社マンで、今春海外赴任でインドのニューデリーに行ってしまい母親も親父に付いていった。少なくとも3年くらいは向こうにいるようで、隼人は今後の
受験とかもあることから1人、日本に残された。
「
そうだよね…。じゃあこんなのはどう」
隼人と千尋は話し合った末、以下のように決めた。
@千尋は隼人の勉強を考査試験最終日まで見ること。
A隼人は前回の各教科の点数に対して上回った点数掛ける100円を千尋に支払うこと。
Bまた平均点を上回った教科掛ける2000円をAとは別に隼人は千尋に支払うこと。
C万一、1教科でも前回の点数を下回った場合はA・Bは全て無効とすること。
D考査試験終了後のバイト継続については千尋・隼人両者が同意した場合継続すること。
隼人と千尋は2人で作成した契約書にそれぞれ署名した。
「なかなかしっかりした契約書になったな」
「これなら15000円くらいの料金になりそうね」
隼人は千尋の顔を思わず凝視した。
「千尋、俺そんなに頭よくないぞ」
千尋は不敵な笑みを絶やさなかった。
「大丈夫よ。隼人には平均点以上を取れる頭になってもらいますから」
隼人は千尋の微笑を見ながら、背筋がゾッとするのを感じていた。